研究概要 |
1.前年度に引き続き,高純度金属中の不純物元素を高い精度と正確さで迅速簡便に定量するためのマイクロスケールの試料分解,予備濃縮法として,新しい器具や合理的な操作による方法を開発した。 目的微量元素の損失とコンタミネーションを引き起こす恐れのある参照電極や塩橋を必要としない定加電圧電解を利用した高純度銅中の鉛,カドミウム及び鉄の予備濃縮法を開発した。陽極に銅線試料を用いて定加電圧で電解溶解すると同時にその大部分をグラッシーカーボン陰極上に電着除去した。電解液(1ml)中のngレベルの目的元素を黒鉛炉原子吸光分析で定量した。陽極溶解は酸使用量が少なく,有毒な窒素酸化物の発生もなく,分析所要時間は約2時間であった。 mg量の高純度鋼中の低ppmレベルの硫黄の定量のため,μlの液量で行う試料分解及び還元蒸留と,回転銀電極を用いる高感度のカソーディックストリッピングボルタンメトリーとを組み合わせた新しい方法を開発した。簡便で安全な試料分解容器や蒸留装置を考案した。この方法は,貴重試料の分析,微量硫黄のミクロ分布状態の研究にも適している。 2.電気化学的分析法を利用した信頼度の高い純度評価技術を開発した。マンガンをカソーディックストリッピングボルタンメトリーにより定量するときの前処理法を確立した。作用電極にはグラッシーカーボンが優れていることを明らかにし,高純度マグネシウム分析の場合には硝酸に溶解した後,アンモニア水でPH7.5に調節すればよいことが分かった。また,共存する諸元素の影響を明らかにした。 絶対定量法である電量滴定法の基礎的研究を行った。鉛アマルガム陽極の電流-電位曲線から鉛(II)イオン発生の電流効率の最適条件を求め,シュウ酸ナトリウムの純度測定に応用したところ,高い精度と正確さが得られた。
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