アニオン複合系新素材としての希土類二元金属フッ化酸化物のO^<2->イオン導電性発現の機構を明らかにし、酸素センサー用固体電解質への利用を目指して、以下の項目について調べた。(1)高いO^<2->イオン導電性が確かめられたネオジム化合物、Nd_2Ln_2O_3F_6についてX線や中性子回折法により結晶構造を明らかにし、XPS法によって結合構造を明らかにし、O^<2->イオン導電性発現の機構を調べる。(2)希土類酸化物とフッ素ガスとの反応から酸化物中或いは酸化フッ化物中でのアニオンの拡散挙動を調べる。(3)緻密焼結体試料作製のためのホットプレス条件を確立し、酸素センサー用試料を試作し機能評価を行う。 Nd_2-Sm_2F_6O_3系について、従来1200℃以上の反応温度を必要としたものが出発試料の粒径調整や真空脱水処理を行い、密閉系で固相反応すると1000℃でも再現性良く正方晶構造単一相が合成できた。Nd_2-Eu_2F_6O_3系のO^<2->イオン導電性は、YSZに代表される固体電解質同様にO^<2->イオンの欠損構造に由来する電導機構として説明されるが、蛍石型を基本構造としたO^<2->イオンとF^-イオンの配列の秩序構造とNdおよびEuの価数変化が関与していることが分かった。また、ホットプレス法による緻密焼結体作製のための最適条件の策定を進めているが、燒結密度の最大値は理論値の0.85にとどまり、これは粒界のopen poreがclosed poreとして残留する為であり、成型する際の粉体粒径の制御や真空下ホットプレスなどを検討する必要がある。希土類酸化物とフッ化物の間のアニオン相互拡散の機構を解明する目的で、希土類金属酸化物とフッ素ガスとの反応を調べ、反応性を分類整理し、Nd_2O_3とCeO_2の酸化フッ化物生成機構を明らかにした。希土類二元金属酸化フッ化物系にNd含量が70wt%にもなるガラス相の生成を確認し、組成など生成条件の確立を検討を進めている。
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