イオン交換反応を活用した組成変換技術は、種々の特異的機能を有する準安定な新化合物をもたらす。本年度の研究では、昨年度カリウムイオン記憶材料として有望であることを見いだしたナトリウム置換テニオライト(NaT)の記憶機能の詳細な評価を行なうと共に、イオン交換反応により合成した塩素置換臭素アパタイトの臭素イオン記憶機能の評価を行った。 1.NaTのK^+イオン記憶機能をMg^<2+>およびCa^<2+>イオン共存下で検討した。その結果、見積られた NatのK^+イオン分離ファクターはMg^<2+>イオン共存下では9.1×10^7、Ca^<2+>イオン共存下では1.4×10^8と非常に大きく、そのK^+イオン記憶機能は共存するNa^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>イオン濃度の影響を殆ど受けないことが判明した。またイオン交換法により合成した水素置換テニオライト(HT;熱分析の結果、2水層型)のNa^+、K^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>イオンに対する選択性も検討した。その結果、HTもK^+イオン記憶機能を有することを見いだした。以上の結果よりNaTおよびHTはNa^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>イオンが共存する系(例えば海外や体液等)からのK^+イオン回収、固定化材料として使用可能であると結論される。 2.塩素置換臭素アパタイトと塩素アパタイトとのBr^-イオン選択性を比較検討した。その結果、塩素置換鉛臭素アパタイトは、共存するCl^-イオン濃度の影響を受けるが、Br^-イオンを確実に取り込み、Br^-イオン記憶機能を有することが判明した。
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