イオン交換反応を活用した組成変換技術は、種々の特異的機能を有する準安定な新化合物をもたらす。本研究では、イオン交換を活用した組成変換によりイオン記憶機能(類似したイオンが多量に存在する系からでも特定のイオンのみを選択する機能)を有する材料、特にK^+およびBr^-イオン記憶機能を有する材料の開発を試み、その機能評価を行なった。種々の化合物について検討した結果、組成変換フッ素雲母、組成変換アパタイトで顕著なイオン選択性が見られた。 1.層状構造のフッ素雲母であるテニオライト(KT)中の層間のK^+イオンをNa^+あるいはH^+イオンで組成変換したNaTおよびNaHは、水溶液中に共存するNa^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>イオン濃度の影響を殆ど受けず、ほぼ一定量のK^+イオンを選択的に取り込み、非常に大きなK^+イオン分離ファクターを示した。以上の結果よりNaTおよびNaHはK^+イオン記憶機能を有し、Na^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>イオンが共存する系(例えば海水や体液等)からのK^+イオン回収、固定材料として使用可能であると結論される。 2.鉛塩素アパタイト(PbClAp)はBr^-イオンを全く取り込まないのに対し、臭素鉛アパタイト(PbBrAp)中のBr^-イオンの一部をCl^-イオンで組成変換したPbBr_<2-X>Cl_XApは、共存するCl^-イオン濃度の影響を受けるが、Br^-イオンを確実に取り込んだ。以上の結果よりPbBr_<2-X>Cl_XApはBr^-イオン記憶機能を有しているので、Br^-イオン回収、固定材料として期待される。
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