フッ素のグラファイトへのインタ-カレ-ション速度はより低温ほどに大きいことを見い出し、グラファイトと1atmの単体フッ素との低温(室温〜-78℃)、長時間反応により、広い組成範囲のフッ素ーグラファイト層間化合物CxF(13.2≧x≧3.6)を合成することが可能となった。X線回折の結果から、x≧5.7までのCxFにおける挿入種の大きさはフッ化物イオンの大きさ2.72A^^°とほぼ等しいことからフッ素がイオンとしてグラファイト層間の中央に存在することが明らかにされた。第2ステ-ジ化合物の場合、繰り返し周期はIc=9.4^^°である。この結果は、ESCA及びXANES測定によっても支持されている。さらに反応が進とX線回折図に大きな繰り返し周期(Ic=10.6^^°)をもつ相が観察された。ESCA測定からこの相が、半イオン性のCーF結合をもつことがわかり、Cー軸方向の電荷密度分布計算から、この相の新しい構造モデルを提案した。X線回折及び重量変化率から、CxFの安定性も考察した。abー面内電気伝導度はフッ素濃度の増加と共に増え、C_<8.4>Fの時に最大値、2.25×10^5S/cmを与えた。この値は、元のHOPGの10倍であった。さらなるフッ素濃度の増加につれ、電導度は急激に減少し、C_<5.7>F以下となると元のHOPGよりも低くなった。DSC測定から150K付近において、層間化学種であるフッ素の二次元的な固体ー液体転移に類似した秩序ー無秩序相転移が生じることが明らかにされた。第2ステ-ジCxFの光反射スペクトルをBlinowskiモデルで解析することにより、π電子帯(価電子帯)に正孔が生じることによるフェルミ準位の低下を評価し、この結果から、グラファイトからフッ素への電荷移動量を計算した。C_<6.1>Fの場合、炭素原子、フッ素原子1個当りの電荷移動量f_C、f_Fはそれぞれ0.01、0.07であった。
|