研究概要 |
本研究は,金属アルコキシドを原料とするゾル-ゲル法を用いて,高分子フィルム,ガラス,あるいは金属に化学的耐久性に優れた酸化物コ-ティング膜を形成するためのプロセスの検討と,基板の特性に対するコ-ティングの効果を明らかにすることを目的として行ったものであり,以下のような知見を得た。 (1)ポリイミドフィルムの水蒸気透過率を低減させることを目指して,シリカ系薄膜を均質にコ-ティングするための条件を検討した。その結果,出発原料としてシリコンテトラエトキシドのみよりも,モノメチル誘導体との併用がコ-ティング膜のクラックを防ぐのに有効であることを見いだした。さらに,コ-ティング溶液のフィルムへの接触角の測定から,均質にコ-ティングできる溶液の調製条件を明らかにした。 (2)シリカ系薄膜をコ-ティングしたポリイミドフィルムの水蒸気透過率を圧力法で評価し,均質な薄膜のコ-ティングが水蒸気透過率を約1桁減少させることを明らかにした。 (3)B_2O_3ーP_2O_5ーSiO_2系ガラス膜をコ-ティングするための条件を検討し,溶液の調整条件やコ-ティング雰囲気の影響を明らかにした。さらに,得られたコ-ティング膜中のNa^+イオンの分布をESCAで測定し,P_2O_5の添加がNa^+イオンの拡散を防止するバッシベ-ションの効果を高めることを明らかにした。また,TiO_2ーSiO_2系薄膜のコ-ティングはガラスの耐候性を向上させるのに効果的であることを示した。 (4)Alーアルコキシドのような非常に加水分解されやすいアルコキシドがら均質なコ-ティング膜を作製するために,βージケトンやアミン類による安定化を検討した。その結果,安定化の効果は溶媒の種類にも依存することを明らかなした。また,アミン類のように,ある程度加水分解される安定化剤の場合は,より緻密なゲルが得られることを示した。
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