研究概要 |
カルシウム化合物の用途の主なものは量産型の製鉄原料,化学肥料,建材などであるが,最近では無機フィラー,イオン交換体,固体電解質,センサ,蛍光体,生体材料などの機能性材料として注目されている。現在,ファインセラミックスに関する研究が行われているが,カルシウム化合物は不安定で反応性にとみファインセラミックスとしては不適当である。しかし,この特徴は一方には水溶液を利用しやすい長所となっている。すなわち,溶解,析出のプロセスにより結晶形態の制御が容易で,その速度さえ制御できれば,超微粒子,ゾル・ゲル,繊維,ホイスカー,薄膜,単結晶といったような新しい材料形態に交換できる可能性があり,すでに一部現実しつつある。本年度は昨年からの継続で非晶質炭酸カルシウムの合成と性質について検討し,これは医薬品用添加剤,結晶化による形態制御が可能なため無機フィラーとして利用することができることが明らかとなった。炭酸ナトリウムと塩化カルシウムの反応においてpHを増大させるために,水酸化ナトリウムを添加しておくことによって粒径0.5μm程度の非晶質炭酸カルシウムを合成することができた。これは,活性が高く微粒であるため溶解しやすく,普通の炭酸カルシウムと比較して10倍の溶解量となる。また,塩化アンモニウム,水などの溶液中に浸漬させると炭酸カルシウムの3種の変態および水和物を任意に得られることを見出した。 また,カルシウムアルコキシドとリン酸アルコレートとの反応により粘性ゾル溶液を合成しこれをアルミナ基板上に浸漬させ,焼成することによりヒドロキシアパタイト(HAp)の薄膜を生成することも成功した。
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