研究概要 |
本研究の目的は人工光合成系構築のための光エネルギ-補獲システムの開発にある。光生物はその光エネルギ-捕獲器官アンテナで光エネルギ-を励起エネルギ-の形で取り込み、これを反応中心タンパク質に伝達し光一化学エネルギ-の変換を行ないATP,NAD(P)Hを生成している。これらを利用して多くの酵素系がCO_2を有機物に固定して、自らの生育に必要な組織と栄養を得ている。本研究は生物の光エネルギ-獲得器官である光合成アンテナの構築原理を解明しこれに反応中心系を組み合わせ、工学的にATP,NAD(P)Hを生成するシステムを開発し、さらに、これと多様な酵素系を組み合わせ有用生理活性物質を生産できるシステムを構築することを目指している。このための基礎研究として本研究においては光合成アンテナのネイティブな状態での構造解析と、光合成系アンテナからの構成要素(色素(クロロフィル)とタンパク質)を分離精製して、その同定を行なった。 耐熱性緑色光合成合細菌Chloroflexus aurantiacusおよびChlorobium tepidumの光合成膜から界面活性剤を用い光合成アンテナタンパク質を単離、精製した。単離した光合成アンテナの構造解析をinーsituで固体状態での高分解能NMRを活用し、ネイティブな状態でクロロフィルの配位状態、クロロフィルークロロフィル間相互作用、クロロフィルと周囲のアミノ酸残基との相互作用を明らかした。その結果クロロフィルはお互いに9位のカルボニル基と2a位のヒドロキシエチル基で水素結合を形成し5配位状態で会合構造を作っていることが明らかとなった。さらに,クロロゾ-ムの ^<13>CーNMRと理論的に求めた環電流シフトの値との比較から会合構造を提察することができた。(雑誌論文1,2,4)また,アンテナタンパク質から光合成アンテナを構成する色素(クロロフィル)を有機溶媒抽出処理で単離し、HPLC(本科研費で購入済み)で精製した。これらの色素、およびタンパク質の構造を ^1Hおよび ^<13>C液体NMR、表面増強IR法、レ-ザ-ラマン法を用いて決定した。バクテリオクロロフィルの7位はファルネシルエステルであることとそれぞれの成分の4位および5位の置換基を決定した。(雑誌論文3)
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