ホルモース反応は、通常水溶液中、均一系塩基触媒を用いて行なわれるホルムアルデヒドのオリゴマー化反応であり、生物の手を借りない食糧(糖類)生産手段として古くから興味を持たれてきた。しかし、反応の選択性が悪く、未だ実用的な意味では成功に至っていない。本研究は、この反応用の高機能触媒設計に資する知見を得ることを目的とする。 前年度の研究において、非水溶媒であるメタノール中でもアルカリ土類金属酸化物(CaO、SrO、BaO)を触媒としてホルモース反応が進行することを見出し、さらに、活性中心の構造がメタノール溶媒中と水溶媒中とで著しく異なる事を示唆する結果を得ている。 本年度はまず、種々のアルカリ土類金属を担持もしくはイオンを交換した固体触媒による触媒反応試験を試みたが、いずれも全く活性を示さなかった。同一化学種が均一系では活性、不均一系では不活性との結果は、本反応において触媒活性錯合体への基質の背面攻撃等の幾何学的因子が作用していることを強く示唆する重要な結果である。 次に、ゼオライト類、架橋粘土鉱物等の細孔構造に特色のある多孔質固体を数種選び、触媒反応試験を試みた。Yー型ゼオライトを触媒とし水を溶媒とする100℃の反応において微量ながら反応の進行が認められた。ホルモース反応の指標とされる黄化現象は生じず、また生成物は炭素数6以下の化合物に限られており、この結果はYーゼオライト細孔の立体規制ないし形状選択性が作用した可能性を示しているが、同時に本研究の条件では触媒細孔中に生成した生成物の脱離が困難であることをも示している。
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