バイオ素子構築にむけた固体表面における生理活性分子の吸着挙動に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03650640
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 大澤 雅俊 東北大学, 工学部, 助教授 (00108466)
• 研究分担者: 末永 智一 東北大学, 工学部, 助教授 (70173797) ; 野澤 庸則 東北大学, 工学部, 教授 (10006322)
• キーワード: 表面 / 吸着 / 生理活性分子 / 表面増強赤外分光 / 表面増強ラマン散乱分光 / 酵素修飾電極 / 光合成細菌 / 反応中心

研究概要

1.固体表面の高感度振動分光測定法の開発
究体表面に吸着したごく微量の生理活性分子を高感度に測定することは、本研究目的において必要不可欠である。そこで、表面増強赤外吸収分光法と名付けた新しい測定法を開発して、その測定原理を確立した。これにより、金属表面に吸着した分子の構造解析が、ウエットな状態を保持したまま、その場で行なえるようになった。現在、これに表面増強ラマン散乱分光法を組み合わせることにより、金属表面におけるタンパク質などの吸着構造を検討している。これらの測定法は、固体表面と直接結合した部位が選択的に観測できるという特徴を有するので、巨大生体高分子などの複雑な分子の吸着挙動を検討するに最適な測定手段であることが明かとなった。現在、金属コロイドによる細胞の染色技術を組み合わせることにより、抗原ー抗体反応などの生体反応を、顕微鏡観察下でin vivoに計測する技術を開発している。
2.酵素修飾電極の作製
新規な電解架橋法を考案し、NADH酸化酵素ジアフォラ-ゼを固定化した修飾電極、ならびにその他の酵素活性なマイクロ化電極を作製した。また、1.のその場分光測定法により、電解架橋反応過程を明かにした。これらの電極を用いることにより、補酵素NADHを効率的に酸化することができるようになり、生体計測への応用の足掛りが得られた。
3.光合成アンテナ錯体の構造と電子移動過程の解析
NMRと振動分光により、光合成細菌由来の反応中心の構造解析を行なった。また、時間分解分光測定により、反応中心における電子移動過程を検討した。これにより、光合成機能と分子構造の関連性が検討できる状態に近付いた。さらに、人工光合成系の一部再構築にも成功し、人工光獲得システム開発の可能性が確認できた。

研究成果

• [文献書誌] 張 憲彰: "A Novel Polyviologen Electrode Fabricated by Electrochemical crosslinking." Journal of Chemical Society,Chemical Communications. 611-612 (1991)
• [文献書誌] 大澤 雅俊: "Surface Enhanced Infrared Absorption of pーNitrobenzoic Acid Deposited on Silver Island Films:Contribution of Electromagnetic and Chemical Mechanisms." Journal of Physical Chemistry. 95. 9914-9919 (1991)
• [文献書誌] 大澤 雅俊: "有機薄膜の赤外・ラマン分光法による解析" ぶんせき. 181-189 (1991)
• [文献書誌] 池田 昌彦: "蒸着銀薄膜を用いた高感度赤外透過スペクトルと微量分析への応用" 分析化学. 40. 187-191 (1991)
• [文献書誌] 野澤 庸則: "Aggregation Structures of Bacteriochlorophyl c in Chlorosomes from Chlorobium tepidum." Chemistry Letters. 1641-1644 (1991)
• [文献書誌] 野澤 庸則: "Temparature and Solvent Effects on Reaction Centers from Chloroflexus aurantiacus and Chlomatium tepidum." Journal of Biochemistry. 110. 588-594 (1991)
• [文献書誌] 野澤 庸則: "Structures of Bacteriochlorophill c's in Chlorosomes from a New Thermophilic Bacterium Chlorobium tepidum." Chemistry Letters. 1763-1766 (1991)
• [文献書誌] 野澤 庸則: "Phosphorylation and Dephosporylation Reactions in Chromatophores of Chromatium vinosum and Chromatium tepidum." Biochimica and Biophysica Acta. 1060. 189-195 (1991)
• [文献書誌] 末永 智一: "An Enzyme Switch Sensitive to NADH" Journal of Chemical Society,Chemical Communications. 1029-1030 (1991)
• [文献書誌] 青木 純: "Mulchichannel Electrochemical Detection with Microelectrode Array in Flowing Streams" Analytical Chemistry. 64. 44-49 (1992)
• [文献書誌] 野澤 庸則: "Dimer Structures of Bacteriochlorophill c from Chlorobium tepidum in CDCl_3." Chemistry Letters. 261-264 (1992)
• [文献書誌] 大澤 雅俊: "Electromagnetic Mechanism of Enhanced Infrared Absorption of Molecules Adsorbed on Metal Island Films." Surface Science. 262. L118-L122 (1992)
• [文献書誌] 大澤 雅俊: "Surface Enhanced Infrared Spectroscopy:Mechanism and Application to Trace Analysis." Analytical Science. 7. 503-500 (1991)