界面における電子移動反応の外部制御に関する研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03650655
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 中村 博 北海道大学, 理学部, 教授 (00117194)
• 研究分担者: 米村 弘明 九州大学, 工学部, 助手 (40220769)
• キーワード: 時間分解ESR / CIDEP / 光誘起電子移動 / 逆ミセル / ラジカル対 / 電子交換相互作用

研究概要

本年度は、時間分解電子スピン共鳴法を用いて逆ミセル中でのポルフィリンービオローゲン系の光誘起電子移動後のラジカル対の挙動について詳細な検討を行った。
電子移動の前駆体であるポルフィリンの三重項のスペクトルの解析を行った。このため、スペクトルシミュレーションのプログラムを開発した。これは、励起光の偏光方向、ESR測定磁場の方向、さらに測定のマイクロ波の磁場ベクトルの方向の3のパラメータが設定できる。このシミュレーションは-120℃剛体中と室温逆ミセル中におけるポルフィリンの3重項のスペクトルを再現できることができた。これらのデータより、ポリフィリン3重項のg値には異方性があること、初期分布が分子の回転軸方向に偏っていることがわかった。
近接した2つのラジカル間の電子交換相互作用を見積もるため、CIDEPスペクトルのシミュレーションプログラムを開発した。これには、ラジカルの減衰の反応速度と電子の交換相互作用、および三重項からの各副準位への分布の偏りを考慮に入れた。このプログラムによってポルフィリン-ビオローゲン連結系のCIDEPの解析を行った結果、T_+及びT_-からT_0もしくはSへのスピンー格子緩和(T_1)は見かけの減衰速度よりかなり遅いことがわかった。一方、スピンと軌道角運動との相互作用による直接Sへの緩和がその見かけの減衰速度の大部分を占めていること、またSからのラジカル消滅の速度もほぼ等しいことがわかった。

研究成果

• [文献書誌] Y.Kubozono: "The Structure and Dynamics of 1,3,5-Cycloheptatriene and 1,3-Cycloheptadiene Radical Cations in Low-Temperature Matrices. An ESR Investigation" Chemical Physics. 160. 421-426 (1992)
• [文献書誌] H.Yonemura: "Magnetic Field Effects on Photoinduced Electron Transfer and the Succeeding Processes in Phenothiazine-Viologen Linked Compounds Incorporated into Cyclodextrins or Reversed Micelles" Chemical Physics. 162. 69-78 (1992)
• [文献書誌] H.Yonemura: "Spectroscopic Studies on Exchange Properties in Through-Ring Cyclodextrin Complexes of Carbazole-Viologen Linked Compounds:Effects of Spacer Chain Length" The Journal of Physical Chemistry. 96. 5765-5770 (1992)
• [文献書誌] T.Matsuo: "Optical Second Harmonic Generation from Ultrathin Polymer Films Impregnated with Ruthenium Polypyridine Complexes" Chemistry Letters. 2363-2366 (1992)
• [文献書誌] H.Nakamura: "Time Resolved Electron Spin Resonance Spectra of Linked Radical Pairs on Laser Excitation of Zinc Tetraphenylporphyrin-Viologen Systems" The Journal of Physical Chemistry. 97. 534-536 (1993)