研究概要 |
当該研究者らは、プレート型熱交換器の壁面に触媒成分をコーティングした管壁型反応器が、触媒充填層反応器と比較して、吸熱や発熱などの反応熱の出入りの大きい反応の制御に大変すぐれており、反応器内の温度分布の均一化による熱効率の改善、反応器の小型化、さらには負荷変動に対する動特性の向上が可能となることをシミュレーションによって推論している(化学工学論文集,19,295(1993))。 本研究では、高伝熱性管壁型触媒反応器の開発を目的として、亜鉛置換と化学還元めっきからなる無電解めっきにより、アルミニウム板上にニッケルを付着させたNi/Al系触媒を調製し、その触媒性能に検討を加えた。 その結果、亜鉛置換操作のときの液性を中性とし、つぎに還元剤に次亜リン酸ナトリウムを用いた化学還元めっきで調製したプレート触媒は、メタノール分解反応に対して高い活性と高い一酸化炭素生成の選択性を示した。さらに(亜鉛置換浴の液性をアルカリ性にすることで活性と選択性の一層の向上を図ることができた。このように、亜鉛置換時の処理条件によって、プレート触媒の性能が大きく支配されることを見い出した。 また、めっき層について、XRD,BET比表面積,SEM,EPMA,およびXPS測定などの各種キャラクタリゼーションを実施した結果、触媒性能はめっき層の多孔度や析出ニッケル量にある程度の影響を受けるが、特にニッケルめっき層中に含まれる亜鉛やリンなどの存在が触媒性能に好ましい影響を与え、従来のニッケル触媒とは異なる性質を発現していることが明らかとなった。これらのことは、反応工学的には管壁型反応器が将来的にきわめて有望であることを示すとともに、触媒化学的には無電解めっきという新しい調製法によって触媒性能の制御を可能にした点で非常に興味深いといえる。
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