平成3年度は層状化合物のカチオン交換能を利用して金属カチオンを固定化し、その触媒特性について検討した。ゼオライトなどに金属カチオンを固定化すると固体酸性が発現し、金属カチオンの特性は発現しない。モンモリロナイトやサポナイトではゼオライトの場合と同様であるが、ラポナイトでは固体酸性が発現せず、金属カチオンの機能が発現することを明かにした。メタノ-ルの脱水素によるギ酸メチルの合成に銅交換ラポナイトを用いると選択的にギ酸メチルが生成したが、サポナイトやモンモリロナイトでは脱水反応が進化し、ギ酸メチル選択率は低かった。従来の研究でフッ素四ケイ素雲母が金属カチオンの担体として有効であることが報告されているが、フッ素四ケイ素雲母は積層構造を有するため層間内に固定化した金属カチオンを有効に反応に利用できないという問題点がある。これに対して、ラポナイトはカ-ドハウス構造で表面積が大きいため種々の反応に適用できることが示唆された。 層状化合物のカチオン交換能を利用した新機能触媒の開発という平成3年度の目的は予定通り実行できたと考えている。現在はアニオン交換能を持つハイドロタルサイト層間内へのポリアニオンの固定化およびその触媒特性について検討している。
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