結晶性多孔体であるゼオライトは均質な表面構造と分子次元の均質な細孔構造を有するため、反応分子の形状を区別し特定の反応分子のみを効率的・選択的に活性化することができる。このためゼオライトは触媒材料として工業的に広く使用されている。モンモリロナイトで代表される粘土鉱物やハイドロタルサイトなどの層伏化合物の層間の無機錯体等を導入した層間化合物はゼオライト類似な多孔体であるため新しい触媒材料として期待されている。層間化合物は層間内に導入するゲスト分子の大きさや化学的性質により層空間の大きさや物性を制御できる特徴を有している。このため、層間化合物では形状選択的な機能はもちろんのこと、層間内に導入したゲスト分子に起因する機能やゲスト分子と層間化合物の酸・塩基性や静電場などの効果との相互作用による機能が期待できる。そこで、本研究では粘土鉱物およびハイドロタルサイトのイオン交換能を利用して種々のゲスト分子を層間内に固定化し、その触媒特性について検討した。 これらの層間化合物は形状選択性を示すことを示した。しかし、芳香属炭化水素の不均化反応においてはモンモリロナイト層間化合物では炭素析出のため活性が経時的に減少した。この触媒に水素活性化能を有する金属を担持あるいは物理混合し、水素雰囲気で反応を行うと活性劣化が抑制されることが示された。この活性劣化の抑制にはスピルオーバーした水素が関与していることを明かにした。ゼオライト触媒ではスピルオーバー水素の効果がみられず、スピルオーバー水素はルイス酸性を示す触媒に有効に作用することが示された。
|