石炭の高圧水素化分解生成オイル分は多種類の環構造(芳香族環ー脂環、ヒドロ芳香族環)に多様なアルキル基、ヘテロ官能基が結合した複雑な混合物である。このため構成成分の化学構造の究明は極めて困難であり、研究の進展が阻まれている。研究者らはHPLC-MS法によって化合物クラス(飽和炭化水素、芳香族環数毎に)に分別し、更に化合物タイプの同族体に分類する構造解析法を確立した(平成3年度)。平成4年度は引き続いて、化合物タイプの同族体を低電圧イオン化(LV)、高電圧イオン化(HV)電子衝撃法(EI)MSによって構成成分の解析を行なった。赤平炭液化油中性成分を化合物クラスに分別し、GC-LV-EI MS法によって化合物タイプ同族体に帰属、分類を行なった。各スキャンNoでのGC-LV-EI MSスペクトルから分子イオンスペクトルを測定して、成分の重複の程度を判定した。主成分がほぼ一種の化合物について、HV-EI MSスペクトルから成分の同定、或は限定することが出来た。各化合物同族体について、保持指標を基準として各成分を配列、帰属した。化合物タイプ同族体の構造解析と平行して、ヒドロ芳香環のナフテン環数による分離を、前年度に検討したODSカラムHPLC、リサイクルGPC分別法に続いて、平成4年度でカーボンカラムHPLCの分離について検討した。カーボンカラムはπ-π電子によってナフテン環構造によるヒドロ芳香族環の非平面性によって吸着の程度に差が生じ、分離が期待できる。石炭液化油の一環芳香族成分をカーボンカラムHPLCによって細分離し、GC-LV-EI MSによって構造解析を行なった所、どのフラクションにも同じ分子量の成分が含まれていた。これは石炭液化油に含まれる構造異性体が分離されたものと考えられる。そこで、各スキャンNoでのHV-EI MSスペクトル、GCによって異性体成分の確認を行なっている。
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