研究概要 |
本研究課題では,メチル芳香族炭化水素の付加価値を高めるための官能基変換反応について検討しているが,今年度は側鎖光ブロモ化反応について精査した。 臭素化剤としてNーブロモコハク酸イミド(NBS)を用いた四塩化炭素中における1ーメチルナフタレンの光ブロモ化において照射光の波長の影響について検討したところ,可視光照射と紫外光照射のいずれにおいても1ーメチルナフタレンの反応速度は同じであったが,可視光照射の方が1ーブロモメチルナフタレンが高選択的に得られた。また,デカリン,アセトニトリル,ベンゼン,クロロホルム,四塩化炭素を用いて2,6ージメチルナフタレンの側鎖光ブロモ化反応に及ぼす溶媒効果について検討したところ,反応選択性と生成物の精製効率を向上させるうえでベンゼンが最適であることを認めた。 以上の結果をふまえて,pーキシレン,4,4'ージメチルビフェニル,1,4ー,1,8ー,2,3ー,2,6ージメチルナフタレン(0.05mol dm^<-3>)を基質としてNBS(0.11mol dm^<-3>)存在下,ベンゼン中,窒素雰囲気下で2時間可視光照射したところ,対応するビス(ブロモメチル)芳香族化合物がほぼ定量的に得られた。また,上記ジメチル芳香族炭化水素(0.05mol dm^<-3>)に対して1.1倍モルのNBS存在下で光ブロモ化を行ったところ,対応する(ブロモメチル)メチル芳香族化合物が約90%の収率で得られた。 従来,NBSを用いた熱的なブロモ化反応や,臭素分子を用いた光ブロモ化反応が報告されているが,本法によれば,はるかに効率良く,純度の高い芳香族側鎖ブロモ化物を合成できることが明らかとなった。
|