研究概要 |
電解環元系でのσーアリ-ルパラジウム錯体の挙動と反応活性種を解明するための基礎研究を行なった。まず、σーアリ-ルパラジウム錯体の電解環元で発生する電子過剰反応種を、種々の親電子剤で捕捉することを検討した。結果は、以下のように要約できる:(1)アリ-ルハライドとパラジウム触媒(Pdcl_2(Ph_3P_3)とをDMF中、白金一鉛電極で電解環元するとビフェニ-ルが生成する;(2)この電解環元系に二酸化炭素を通じると安息香酸を与え、ビフェニ-ルは全く生成しない;(3)βーブロモスチレン存在下に電解環元を行なうと、クロスカップリング体(スチルベン)が生成する;(4)電解環元系に過剰の塩化トリメチチルシリルを添加しても、生成物はほとんど変わらず、ビフェニ-ルだけが生成する。塩化トリブチルスズも、同様な結果を与える。 これらの結果は、「σーアリ-ルパラジウム(II)錯体が、電解環元でアリ-ルアニオンとパラジウム(0)に変わる」単純な機構では説明できない。一方、σーアリ-ルパラジウム(II)錯体のサイクリックボルタンメトリ-では、一つの二電子環波と、生成する活性種の二つの酸化液が観察された。これらの結果を総合して、「σーアリ-ルパラジウム(0)アニオン"とアリ-ルアニオン、パリジウム(0)"との平行混合物が生成する」ものと推論した。即ち、前者とアリ-ルハライドからビアリ-ルを生成する反応と、後者と親電子剤(CO_2,Me_3SiCl,etc.)との反応が、競争的に起こり、後者の反応が遅い場合はビアリ-ルが生成すると考えると、上述の結果はよく説明できる。 σーアリ-ルパラジウム(0)アニオンは、現段階では仮説の域を出ないが、このアニオン錯体の生成を念頭に、異種アリ-ルハライド間クロスカップリング等、新しい可能性についても検討を進めた。
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