研究概要 |
本研究では、アシルシランシリルエノ-ルエ-テル(I)をアセタ-ルとの反応によってジアステレオ選択的に対応する3ーアルコキシアシルシラン(II)に変換すると共に、これを利用する3または4連続不斉中心の選択的構築法の開発を目的とした。この手法の特徴は、アルド-ル付加体(II)が再びアシルシランとなるため、シリル基を他の置換基に変換可能な点にある。 ガルボニル基のα位にメチレン基を有するアシルシランをLDAまたはホスホニウムジイリドによってエノ-ル化させ、生じたエノラ-トを塩化シランで捕捉してIを良好な収率で得た。エノ-ル化剤としてのLDAの使用はZおよびEーIの混合物を生じたが、ホスホニウムジイリドではEーIが選択的に得られた。EーまたはZーIとアセタ-ル類のアルド-ル反応ではいずれのIからも2,3ーantiーIIが優先的に生じたが、ZーIからの反応の立体選択性はEーIのそれよりやや高い。また、エ-テル炭素置換基がフェニル及び直鎖アルキル基のIとベンズアルデヒドアセタ-ルとの反応で最も高い立体選択性(d.e=92ー96%)が認められたが、それ以外の場合では選択性がやや低下した。 IIにアルキルまたはフェニルリチウムを反応させ対応する3ーメトキシー1ーシリルアルコ-ル(III)を定量的かつ高ジアステレオ選択的に得た(d.e=80ー99%)。また、synーIIからの反応の立体選択性はantiーIIのそれより高い。グリニヤル試薬を求核剤とするとさらに選択性は向上した(d.e=90ー99%)。 antiーIIIのフッ素アニオン試薬による脱シリルプロトン化は定量的かつ立体特異的に進み、対応する1,2ーantiー2,3ーantiー3ーメトキシアルコ-ル(IV)が得られた(d.e=>99%)。IIと求核剤の反応においては、金属イオンがIIのカルボニル酸素とメトキシ酸素に配位して環状構造をとり、求核剤がIIのカルボニル炭素を立体障害の少ない側から攻撃してIIIが生成したと考えている。またIIIの脱シリルプロトン化反応は、IIIの水酸基プロトンとメトキシ酸素との間で水素結合が形成された状態で、立体特異的(保持)に進行したと考えた。
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