研究概要 |
ヘテロ原子や複素環化合物の特性を生かして選択的な合成反応を開発することにより機能性複素環化合物の分子設計を行なうことを本研究の目的としてきた。この間の成果を以下に述べる。 1.複素環周辺ジエンの[4+2]環化付加反応;ジエン発生においてマグネシウム(II)塩と有機塩基の組合せがブチルリチウム等の強塩基に替わるものとして有用であることを明らかにした。本法をもちいて2,4(1H,3H)-ピリミジンジオン、4(1H)-ピリドン、および△^3-ピラゾリン-5-オン系においてマグネシウムジエノラートを発生させオレフィンやトロポノイドとの選択的な環化付加反応を行なうことにより新規環系を含む多くの新規複素環化合物を合成した。 2.複素環周辺部での1,3-双極子環化付加反応とエン反応;5-ホルミル-2,4(1H,3H)-ピリミジンジオンとヒドラジン、ヒドロキシルアミンとの反応で生成するヒドラゾン、オキシムでは1、2-水素移動によりアゾチンイミンやニトロン中間体が容易に発生し分子内付加反応を行なうことが明らかとなった。一方、アミノ酸誘導体との反応ではアゾレチンイリド環化付加とイミンを親エン部とするエン反応が競合した。後者については分子軌道法計算をもちいてその経路を解明した。 3.カルボジイミドの求核性を利用しての環化反応;カルボジイミドの環化反応により薬理活性が期待できる複素環化合物を選択的に合成する経路を明らかにした。この環化を連続的に行い鎖状カルボジイミドからの多環性複素環化合物合成へと応用した。
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