有機材料の特異な機能を引き出す試みが活発に行われており、フォトクロミック材料はその代表的なものである。光で可逆的に色調が変化するだけでなく、その可逆的分子構造変化に基づく様々な機能制御も可能にするので、光知能材料創設への期待がかかっている。 本研究では両性対イオン種(芳香族オキシカルボン酸亜鉛)添加によるスピロピラン系色素の熱及び光安定性の改善策確立、半導体レ-ザ-に感受性をもっスピロピラン系色素の開発、フォトンモ-ド記録システムにおける非破壊読み出しの確立、半導体レ-ザ-と有機非線形光学材料の組合せによる一光源二波長素子に適合性をもつフォトクロミック色素の開発を行った。また、スピロピランーメロシアニンの異性化を、分子認識機能と組合せ、分子認識に誘起された、構造変化と情報発信が行える多機能型完全人工レセプタ-の設計及び合成等、超生物分子の開発に向けた基礎的研究を行った。以下に今年度の研究実績の概要を記述する。 1.半導体レ-ザ-に感受性を持つスピロピラン系色素の合成デザインをPPP MO法を用いて行い800nm付近に吸収を有する化合物の合成に成功した。 2.上述の化合物の置換基を種々変換し、そのスペクトル特性を詳細に検討した。 3.スピロピラン系色素の熱及び光安定性に及ぽす対イオン種(芳香族オキシカルボン酸亜鉛)の寄与を明らかにするため、そのX線構造解析を行った。 4.スピロピラン系色素の吸収スペクトル、安定性と構造の相関性を検討した。 5.核酸塩基認識機能を有するスピロピリドピランの設計と合成に成功した。
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