本研究では、ビベンゾエイトをメソゲンとし、屈曲鎖部に種々の分枝メチレン鎖を有するBBーnポリエステルを合成し、それらの液晶相転移挙動及びスメクチック液晶の構造・物性を調べ、以下の諸点を明らかにした。 (1) 屈曲鎖アルキレン鎖の炭素数が偶数のBBーnはスメクチックA相を示す。この偶数系BBーnを用い、分枝メチル基の効果を調べた結果、分枝メチル基を非対称に一つ導入した場合には、スメクチックA相がスメクチックC相に、また二つ導入した場合には、ネマチック相に変換されることが明らかになった。いずれも、分枝メチル基の立体障害により誘起されたものであり、X線、NMR観測及び理論的考察からその具体的な誘起効果に解釈を加えた。 (2) (1)の結果に基づき、光学活性2ーメチル ブチレン鎖を屈曲鎖とするBBーnポリエステルにおいて、キラル・スメクチックC相を得ることに成功した。また同時に、自発分極の観測を通してこの液晶相が強誘電相であることも確認した。 (3) 屈曲鎖メチレン鎖の炭素数が奇数のBBーnは、メソゲンのチルト方位が隣接層間で反転する特異なスメクチックC_2液晶相を形成する。このスメクチックC_2相も、屈曲鎖を光学活性鎖(具体的には、1ーメチル プロピレン鎖)にすることで、キラル・スメクチックC_2相になることがわかった。さらに、このキラル・スメクチックC_2相は、前述したキラル・スメクチックC強誘電相とし異なり、反強誘電相であることが明らかにされた。
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