研究課題/領域番号 |
03650722
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土田 亮 京都大学, 工学部, 助手 (60183076)
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研究分担者 |
大岡 正孝 京都大学, 工学部, 教務職員 (10160425)
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キーワード | 多光子イオン化 / 電子放出 / 電子捕捉 / 高分子固体 / ホトクロミズム / カチオンラジカル / 長距離電子移動 / ペランプロット |
研究概要 |
1.高分子媒体中にド-プされた低分子クロモホアの多光子励起電子放出によるホトクロミズムの寿命を、各種パラメ-タを変化させて測定した結果、(1)低いイオン化ポテンシャルを持つ低分子クロモホア、(2)高い電子親和性を持つ高分子媒体、(3)高いガラス転移温度を持つ高分子媒体、(4)低い保存温度を用いる程ホトクロミズムが長く持続することがわかった。実用的な光記録材料としての応用を考えるうえで、これらを満足する系の設定が重要である。2.高分子媒体中での多光子イオン化により、どの程度の電荷分離距離が可能となるかを求めるため、ホトクロミズムの消失速度の温度依存性を調べ、長距離電子移動の電荷再結合モデルをこの減衰に適用して解析することができた。この結果、親分子から多光子励起により放出された電子は、親カチオンラジカルから約30Åのところにその中心を持つガウス分布により、球殻状に分布していることが明らかとなった。ガンマ線や電子線等の放射線を用いたイオン化において従来求められてきた、電子の指数関数型分布とは大きく異なるものである。このように、光励起と放射線励起とにより放出電子の分布関数型がちがうのは、光はその単色性がよくイオン化に使われるエネルギ-ガ-定であることと、クロモホア自体の選択励起が可能であるためエネルギ-のボルツマン型再配分がないことという、光の特長があらわれたものである。3.多光子イオン化放出電子が高分子媒体中に熱安定化され捕捉される過程を、低分子電子アクセプタ-を第三物質として系に導入し、電子捕捉を競争させることにより調べた。この結果、高分子媒体中における一光子イオン化、二光子イオン化のいずれもペランプロットにより解析できることがわかった。ここで求まったイオン化の活性半径は、一光子のものよりも二光子のものが大きく、多光子の高エネルギ-によるイオン化が大きな電荷分離距離に有効であると明らかになった。
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