本年度は、前年度において生成が予測されたが未だ明確ではないメカノカチオンの検知を試み、実行した。高分子材料の機械的破壊により、メカノアニオンの対として生成する化学種はメカノカチオンであると考えられる。しかしながら、メカノカチオンの検知には電子捕捉法では本質的に不可能である。そこで、典型的なカチオン重合性モノマーであるイソブチルビニルエーテル(IBVE)を用い、メカノカチオンによるカチオン重合の開始および生成された高分子物質の検証から高分子の機械的破壊によるメカノカチオンの生成を立証するという方法を用いた。 ESR、FT-IRの測定結果は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)の機械的破壊により主鎖の炭素ー炭素結合が不均一に切断し、PVDFメカノカチオンが生成したこと、そしてそのPVDFメカノカチオンがIBVEのカチオン重合を開始し、ポリイソブチルビニルエーテル(PIBVE、分子量;Mw=6.2X10^4、Mn=2.3X10^4)が生成したことを示した。これより、PVDFの機械的破壊により主鎖の炭素ー炭素結合が不均一に切断し、PVDFメカノカチオンが生成したと結論した。
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