研究概要 |
本研究はモノマ-の分子設計と重合反応の制御による新規な高分子イオノフォアの合成とその分子認識能を解明することを目的とした。その結果、合成および機能に関して初期の目的が達成された。 1.高分子イオノフォアの合成 モノマ-として1,2:5,6ージアンヒドロー3,4ージーOーメチルーLーイジト-ルおよびDーマンニト-ルを合成し、これを三フッ化ホウ素を用いて環化重合を行った。得られたポリマ-は通常の有機溶媒に可溶性であり、また、未反応のエポキシ基を全く含んでいなかった。ポリマ-の構造はポリマ-の環化単位に相当する2,5-アンヒドロ-D-グルシト-ルの ^<13>CNMRスペクトルと一致することからポリ〔(1→6)ー2,5ーアンヒドローDーグルシト-ル〕であった。従って両モノマ-の重合はいずれも位置および立体特異的であった。 3,4ー位にアリル基、メチル基、ペンチル基、デシル基、イソプロピリデン基を有する1,2:5,6ージアンヒドロ-Dーマンニト-ルも合成した。イソプロピリデン基を有するモノマ-からのポリマ-は環化率が50%と低かったが、他のモノマ-からのポリマ-はいずれも環化率が100%であった。 2.分子認識能 (1)カチオン性ゲスト:アルカリ金属カチオンについては、ポリ〔(1→6)ー2,5ーアンヒドローDーグルシト-ル〕はカリウム、ルビジウム、セシウムカチオンに対して高い捕捉能を示した。また、本ポリマ-はロ-ダミン6Gやメチレンブル-などの比較的大きなカチオンに対しても捕捉能を有していた。これはポリマ-が補足するカチオンに応じてポリマ-のヘリックス構造を変化させるためである。 (2)アミノ酸の不斉分割:フェニルグリシンメチルエステルの不斉認識輸送をU字管を用いて行った。Dー体およびLー体を別々に輸送すると、両者の輸送速度には差が見られなかった。一方、DLー体を輸送すると輸送された側にはLー体が過剰となった。その際の光学純度は12%であった。この様に、本ポリマ-はラセミのアミノ酸に対して不斉認識能を有する新しい高分子イオンノフォアであるこてが明らかとなった。
|