本研究は、分子量の制御された高分子を合成するための高活性触媒システムの分子設計を目的として、金属ポルフィリン錯体をベースとした重合開始剤の開発を目指す。 本年度は、かさ高いポルフィリン錯体の構造に着目し、これとかさ高いルイス酸をモノマー活性化剤として用いると、メタクリル酸エステルが極めて高速でリビング重合し、分子量のそろったポリマーを与えることを見いだした。生成ポリマーの数平均重合度は、金属ポルフィリン錯体とモノマーのモル比を変えることにより自在に調節することが可能であった。この特徴を利用し、これまでに成功例のない100万を越える分子量のポリマーを分子量のきわめてそろった形で得ることに成功した。 メタクリル酸をステル以外にも、エポキシドやラクトンなどのヘテロ環状モノマーの高速なリビング重合も可能であり、分子量のそろったポリエーテルやポリエステルを極めて短時間で得ることに成功した。核磁気共鳴をもとにした詳しい検討から、モノマーがルイス酸に配位することで活性化をうけ、それをポルフィリン錯体が高速で攻撃することにより、重合が進行することがわかった。通常、求核剤とルイス酸が共存する系では、両者がたとどころに反応し、分解してしまうが、本系では、求核剤(金属ポルフィン錯体)とルイス酸が共にかさだかいために、このような副反応が立体的に抑制されていることがわかった。
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