研究概要 |
本研究は、置換アセチレンと環状オレフィンとの共重合を試み、新規ポリマ-の合成、生成ポリマ-の特性と機能、重合触媒の開発などに関して知見を得ることを目的とするものである。平成3年度は、フェニルアセチレン(PA)およびその核置換体と環ひずみの大きい環状オレフィンであるノルボルネン(NBE)との六塩化タングステン触媒による共重合を検討した。以下に研究成果の要旨を述べる。 1.コポリマ-生成の確認 PAとNBEとの共重合(仕込み比1:1)において両モノマ-は誘導期なく同時に消費された。PAとNBEの相対消費速度は約5:1であった。この共重合の主生成物はメタノ-ル不溶性のポリマ-(数平均分子量41,000、分散比2.15)であり、IR、NMRスペクトルなどによりPA、NBE両ユニットの存在が認められた。共重合生成物の紫外可視スペクトルはポリ(PA)と比べて短波長シフトを示し、NBEユニットの存在による共役系の縮小が確認された。さらに2次元HーH COSY NMRスペクトルによりPAーNBE交差成長部分が直接観測された。以上の結果よりコポリマ-の生成を明らかにした。 2.共重合に及ぼすPAの置換基効果 PAおよびそのパラまたはメタ置換体とNBEとの共重合ではランダムコポリマ-が生成することが共重合組成曲線の形から明らかとなった。置換基の電子吸引性の増大とともにPAの反応性が低下した。ハメットプロットにより反応定数は-1.1と求められた。一方、立体効果の大きいオルト置換PA(例、oーCF_3PA)とNBEとの共重合では組成曲線はS字型となり、ブロック性のコポリマ-の生成が示唆された。これは、オルト置換PA末端からNBEモノマ-への成長が、立体的な理由により困難なためと推定される。
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