研究概要 |
1.研究目的 凝縮器の小型化および高効率化を目指し,滴状凝縮熱伝達に関する研究は活発であるが,その大部分は定常過程を扱ったものである.しかし,昼間と夜間の電力負荷の変動を火力発電において負担する場合などのように,化学工業を始めとする諸プロセスを非定常的に運用する機会は極めて多い.そこで,本研究では工業的に実現間近な滴状凝縮が,凝縮器中で非定常的に起きた場合を想定し,非定常過程における滴状凝縮熱伝達の機構を解明することを目的とした. 2.研究結果 先に提出した研究計画書に基付き,以下のような手順で研究を逐行した.即ち,(1)非定常過程における伝熱面温度および熱流束を正確に測定するため,非定常熱伝導問題の厳密解と伝熱ブロック内温度の経時変化を組合せることにより,その境界条件である表面温度および熱流束を逆算し求める解析法を開発した.次に,(2)(1)の解析法に従った実験装置の設計および製作を行ったが,その際伝熱ブロックは,滴状凝縮時に発生する大きな熱流束を考え,先端部を凝縮面とするコ-ン型銅製伝熱ブロックとした.また,実験はブロック裏面を突然冷却することにより行った.実験の結果,(3)滴状凝縮時の熱流束qは蒸気ー伝熱面間温度差△tの増加と共に増加するが,非定常過程のqは定常過程の場合に比較し,若干大きな値を示した。この原因としては,非定常実験の場合ブロック内の温度伝播速度が冷却速度より遅れ,ブロック内温度勾配が急になるためであると考えられる. なお,非定常過程における滴状凝縮時においては凝縮滴の挙動が冷却速度の影響を受けるものと考えられ,その挙動が熱流束に及ぼす影響などは極めて興味深い問題であり,検討すべきことであるが,本研究においては交付決定が遅く,それらを検討するまでに到らなかった.
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