研究概要 |
タンパク質は高い圧力をかけることにより変性し、ゲル化をおこす。現在この現象を利用した食品の加工・殺菌などが行われているが、圧力変性を支配する要因に関しては明らかになっていない部分が多い。これは、タンパク質中には多くの親水基・疎水基が混在し、その各々の圧力に対する挙動が異なるからである。本研究では、タンパク質の圧力変性の機構を明らかにするために、主にタンパク質中の疎水基に注目して、疎水性の強い水溶性高分子をモデルタンパク質とし、その水溶液中における圧力による凝集を測定した。実験は、モデル高分子としてNーイソプロピルアクリルアミドポリマ-(pNIPA)と、その一部を親水基の導入で親水化したNーイソプロピルアクリルアミド/アクリル酸共重合体ポリマ-(pNIPA/AAC)を用い、ポリマ-の凝集を溶液を透過する光の減衰として測定する方法で行った。なお、PNIPAはよく知られた疎水性高分子であり、水溶液中では疎水性相互作用により高温域で凝集する。実験では、0.5,1,3,5wt%の水溶液を用い、圧力0.1〜300MPa,温度15〜80℃の範囲で測定を行った。 pNIPA溶液の場合、凝集温度は一度は圧力上昇とともに高温度側へと移動したが、40MPa付近で最大値となった後、圧力上昇とともに低温側へと移動した。凝集温度は0.5wt%溶液の場合を除いて濃度に依存せず、0.5wt%の場合には若干高温・高圧側へと移動した。一方pNIPA/AA_c溶液の場合には、凝集温度曲線の形状に関してはpNIPA溶液の場合と同様の結果が得られたが、この溶液の場合には凝集温度曲線の濃度依存性が大きく、濃度が薄いほど凝集温度は高温、高圧側へと移動した。これは荷電基の存在により発生したDannauの浸透圧によるものと考えられる。
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