研究概要 |
アフィニティ吸着剤をリガンドによって分類すると,生物特異的リガンドと,凝生物特異的リガンドとに分けられる.生物特異的リガンドとして,抗原,抗体,基質などがあり,凝生物特異的リガンドとして,アミノ酸,固定化金属,染料などがある.ポリビニルアルコ-ルビ-ズにリガンドとしてフェニルアラニンおよびトリプトファンを有する免疫吸着剤は,重症筋無力症,リウマチなどの治療に使用されている.また,フェニルアラニンリガンドは血しょうタンパク質や酵素の分離にも利用されている. 膜を利用するアフィニティクロマトグラフィ-は既存のビ-スを利用するクロマトグラフィ-に比べて次のような利点がある.(1)中空糸膜を充填したモジュ-ルはビ-ス充填層より低い圧力で操作ができる.(2)多孔性膜の内部,すなわち孔の表面に固定されているリガンドに,タンパク質が対流移動するので,吸着速度が大きい.Brandt et al.(1988)は,ゼラチンやプロテインーAを有するアフィニティ膜を使って,それぞれfibronectionやIgGの効果的な分離を行った.しかしながら,アフィニティ膜の合成法,リガンド密度および細孔構造については述べていない. 本研究では,放射線グラフト重合法を適用して,ポリエチレン製中空糸状精密濾過膜にリガンドとして,疎水性アミノ酸(フェニルアラニンとトリプトファン)をカップリングした.アフィニティ膜へのタンパク質の吸着性能をバッチ法と膜透過法によって調べ,次の結論を得た. (1)γーグロブリンの吸着容量は,トリプトファン膜のほうがフェニルアラニン膜より大きかった.(2)膜透過法で流量を変化させても,γーグロブリンの吸着破過曲線の形は変化しなかった.これより,アフィニティ膜が,総括の吸着速度に対して,拡散移動抵抗の無視できる優れた分離材料であることが示された.(3)吸着,溶出を繰り返しても膜の吸着性能は変化しなかった.
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