研究概要 |
地球温暖化原因ガスである炭酸ガスを煙道ガスから分離回収するため、耐熱性のある多孔質ガラス膜を基膜として用い、その細孔表面を有機官能基により修飾することで選択性を高めた、有機ー無機複合膜を開発することを目的に研究を行った。以下に研究結果を概説する。 1)多孔質ガラス基膜のガス分離性能 細孔径4、30、50nmの多孔質ガラス膜を用い、ヘリウム、アルゴン、窒素、炭酸ガスの透過実験を行った。何れの膜でも、炭酸ガスを除き、透過機構はクヌッセン拡散であったが、炭酸ガスの透過は表面拡散の影響でこの機構では説明できなかった。 2)有機ー無機コンポジット膜の製膜 上記の膜を以下の4種のシランカップラ-で修飾し、有機ー無機コンポジット膜の製膜を試みた。正荷電基:Nートリメトキシシリルプロピル-N,N,Nートリメチルアンモニウムクロライド、(N,Nージエチルー3ーアミノプロピル)トリメトキシシラン、負荷電基:スルホン化ベンジルジメチルクロロシラン、中性基:トリメチルシランの4種である。種々反応条件を検討した結果、細孔径30、50nmの膜にはシランカップラ-を導入できたが、細孔径4nmの膜には細孔径が小さすぎるためか、細孔内に十分導入することはできなかった。 3)炭酸ガス分離実験 シランカップラ-を導入できた細孔径30、50nmの膜を用い、炭酸ガス、窒素、酸素単成分の透過実験を行った。未修飾膜と比べて透過係数は若干減少したが、選択性には何れの修飾基でも大きな変化はなかった。導入した官能基と炭酸ガスとの相互作用はあるものと考えられるが、細孔径が大きすぎるためにその影響が顕著に現れていないものと予想される。今後、細孔径をもう少し小さく(10ー15nm程度)制御した後修飾し、その効果を検討する必要があろう。
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