本研究ではまず始めに、下部臨界共溶温度を有する高分子二成分系(PMMA/PVAc)系において、昇温により熱力学不安定領域に保ち、二相連続構造の形成過程を光散乱装置により測定した。構造周期および構造形成過程に及ぼすブレンド比、相分離温度および昇温速度の影響について検討を行い、相分離の線形理論および中期・後期過程ではスケーリング理論により解析を行った。その結果、ほぼ理論通りの結果が得られた。 高分子ブレンド膜の作製法であるキャスト法での溶媒蒸発過程における構造形成過程を光散乱法により測定し、構造発達過程を解明した。二相連続構造の構造周期は溶媒蒸発速度だけではなく高分子量にも依存した。構造周期は相分離が開始してから構造が固定化されるまでの経過時間により相関されることを見いだした。最大の散乱強度Imは成膜条件に依らず、平均構造周期の大きさに逆比例する波数qm^<3.3>に比例することが見いだされた。これらの構造形成過程をスピノーダル分解を記述する拡散方程式と溶媒蒸発過程での高分子濃度の時間変化を記述する式を数値的に解くことにより、キャスト成膜時にみられる相分離形成過程を定性的ではあるが、シミュレートする事ができた。 つぎに、二相連続構造の構造周期が溶媒蒸発速度で制御できることを利用して、物質分離能のあるポリジメチルシロキサンを1成分として、キャスト法により種々の変調構造を有するポリマーブレンド膜を作成した。そして、この高分子ブレンド膜によるエタノール-水のパーベーパレーション法による物質透過性能(透過流束および選択性)を測定して膜のミクロ構造と分離機能性の相関を得ることができた。
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