研究概要 |
宿主に有用物質遺伝子を導入し,活性な物質を発現させたとしても,それらのいわゆる“組み換え体"を培養する技術や,適切な培養条件についての検討が不十分で,これら有用物質の工業的生産を考えるうえでは、急務を要する研究となっている。 本研究では、遺伝子組み替え酵母を用いた異種タンパク生産に注目し、その生産系の構築、実際の発酵生産におけるさまざまな問題点の解明および効率的生産法の確立を目指している。温度感受性遺伝子発現調節系を持つ酵母Saccharomyces cerevisiaeを用い,概略次のような研究成果を得た。 1)MFα1::PHO5ベクタをもとにした生産系の確立に便利な温度感受性発現ベクターを構築し、酸性ホスファターゼ生産に適用した。また温度切り替えによる最大生産政策を求め、実現した。 2)この系に異種タンパク生産としてイネ由来のα-アミラーゼ遺伝子の発現を試みたが、発現量はやや少なかった。 3)PHO84プロモータをPHO81温度感受性をもつ宿主に導入した系(SH3337株)を構築し、α-アミラーゼ遺伝子の発現を試みたところ、十分な発現量を得た。 4)この系を用いて、最大生産のための温度政策を求め、又実験でこれを実現し、有用な知見を得た。 これらの成果より、遺伝子組み替え体を用いた効率的な物質生産を行うための発現制御法、特に温度を操作することによる培養制御法の確立および有用物質生産法の効率化の一方法が確立された。
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