本研究では、Bi-Ca-Sr-Cu-O系の酸化物超伝導体の薄膜および微粒子が生成されるCVD反応器を製作し、反応器の温度、蒸気の濃度、およびキャリアガスの流量を様々に変えて行い、薄膜および微粒子の生成がどのように変化するかを種々の条件下で実験的に検討した。つぎに、凝集モデルにより粒子の生成を考慮した拡散方程式を熱エネルギー方程式と連立して非等温場で数値計算し、実験結果と比較検討した。以上の実験および計算より次のようなことが明かとなった。 1.Bi-Ca-Sr-Cu-O系の高温の酸化物超伝導体の薄膜および微粒子の材料として、ハライド系およびβ-ジケトン系の金属の錯体の粉末を蒸発用のボートに入れ加熱し蒸発させ、Bi:Ca:Sr:Cuの比が一定となる各蒸発温度が明かとなった。 2.反応温度を種々に変えて、発生した微粒子を反応器の出口で採取し、その結晶構造をX線回折で調べ、80K相の超伝導体が得られる反応温度が明かとされた。また薄膜についても同様な条件が明かとなった。 3.キャリアガスを変えた実験より、80K相の超伝導体が得られるガスの滞留時間があきらかとなった。また、微粒子の大きさは、滞留時間に比例して大きくなったが、平均径はほぼ0.05〜0.07μm程度であった。 4.反応器内の操作圧力を種々に変えて、発生した微粒子を反応器の出口で採取し、装置内においた基板上に堆積した薄膜の結晶構造をX線回折で調べ、80K相の超伝導体の薄膜が得られる反応温度が明かとなった。薄膜の生成は、操作圧力が低くなるほど顕著となり、圧力が0.01気圧以下では粒子の発生がほとんど抑制された。 5.得られた微粒子の大きさおよび膜の堆積状況は、凝集モデルにより粒子の生成を考慮した拡散方程式を、熱エネルギー方程式と連立して、非等温場で数値計算され得られた計算結果で定性的ではあるが、良く説明された。
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