我々は人工臓器、特に臓器の細胞を一旦分離し培養した後、人工マトリックスとともに人体へ戻すハイブリッド型臓器の作製をめざして研究を進めている。本研究ではこのうち人工肝臓と人工血管に着目し、基礎・研究を行った。 コラゲナーゼ潅流法により分離した成熟肝細胞を用い、肝機能の長時間維持、細胞寿命の長期化を図るため、培地成分について検討し、成熟肝細胞の生存、高い肝機能維持には基本培地としてLー15培地、添加物としてはリポプロテインが有効であることが明らかとなった。 一方、ビタミン、アミノ酸等の添加効果を調べたところ、コラーゲンの主成分であるプロリンとコラーゲン生合成時に補酵素として働くアスコルビン酸により肝細胞のアルブミン合成が抗進し、最低一週間程度維持されることが判明した。また、これら肝細胞を充てんし人工肝臓を構築するために、セルロース由来の多孔性担体にコラーゲン、ヘパリン等を結合した担体を作製し動物細胞の付着増殖能を調べたところ、107/ml程度の高濃度に細胞を培養することができ、いずれの担体も人工肝臓構築に利用できることがわかった。さらにアルギン酸とポリウレタン、光架橋性樹脂等を用いた包括固定化法を開発したが、いずれの場合も107cells/ml程度の高濃度に細胞が固定化でき有用であると考えられる。 一方、人工血管を作製するために、血管の内面を覆う血管内皮細胞を分離した。細胞を長期間維持培養しかつ、血管内皮細胞特異的機能を維持するために、ガン化や細胞の長寿命化の機能が温度感受性のサルのガンウイルスSV40を内皮細胞に感染させた。これにより寿命が200日以上に延び、しかも温度を37℃にすると死んでしまう血管内皮細胞のセルラインを確立した。
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