少量のアルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物を混合したホウケイ酸ガラスをあらかじめ定められた方法で、熱処理及び酸処理を行い、多孔性ガラスにした。このガラスに5%のニッケルを担持させて、置換したメチル基の数の異なる芳香族炭化水素及び分子量が同一であるが、平均分子径が異なるオレフィン類の水素化反応を固定層触媒反応装置を使用して行い反応速度を求めた。この相対速度とホウケイ酸ガラス中の金属酸化物含量との関係を求めた。金属酸化物含量が3%以下のホウケイ酸ガラスから調製した多孔性ガラスを担体としたときには、分子形状選択性が顕著でないが、3%以上になると分子径の大きな炭化水素の水素化反応速度が小さくなり、その差は金属酸化物含量の増加とともに増大することが分かった。また、前年度測定した金属酸化物含量と細孔分布の関係より、2%以下のガラスでは平均細孔径が30Åであるが、これが金属酸化物含量と共に徐々に減少し、4%では15Åになった。特に、20Å以下の細孔分布の測定から4.5%のガラスでは、分子形状選択性に深く関係する8Å程度の細孔が主として存在することが分かった。また、細孔径の制御に最も効果的であったアルミナに匹敵するのは、ジルコニアと酸化ランタンあり、チタニア、二酸化マンガン等は大きな効果を示さなかった。この原因は、後者の物質は塩酸処理時に溶解するためであると考えられた。 炭素数が6であるヘキサン類の水素化反応及び吸着実験結果から反応が触媒の細孔内で進行するとき、反応速度及び拡散速度を支配するのは、分子の最小径ではなく平均径であることを明らかにした。このような事実は、本研究で使用した程度の細孔径を持つ物質がなかったために今まで知られていなかった。多孔質ガラスが分子形状選択性を示す有効な触媒担体として応用可能にことを明らかにし、目的を達成したと考えられる。
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