研究概要 |
深刻な環境問題の一つに酸性雨による被害は大量の石炭の燃焼に伴う亜硫酸ガスの放出が原因と考えられている。地球規模で亜硫酸ガスの放出を抑えるためには、微生物脱硫の技術の確立が期待されてきた。しかし、有機硫黄原子が微生物により直接代謝される反応機構について殆ど知見がない。そこで、ジベンゾチオフェン(DBT)を化石燃料中の有機硫黄化合物のモデル物質として、微生物代謝の経路と、有機硫黄原子の酸化反応の、酵素学的、遺伝学的知見を得て、将来の環境浄化に貢献することを目標としておこなった。 1.DBT資化菌及びDMS資化菌のスクリーニングとその菌学的検討 畑土壤よりスクリーニングを行った結果、DBTを硫黄源として生育する菌株が5株えられた。5株はいずれもグラム陽性の桿菌であり、そのうち最も生育の良いSY1株はRodococcus sp.と同定され、生育にはチアミンが必須であった。 SY1株はDBTのほか、DMS,ベンゼンスルホン酸,メタンスルホン酸、2-メルカプトエタノール、二硫化炭素、元素硫黄なども硫黄源として資化するすることができた。 2.SY1株によるDBTの分解経路 DBTを単一硫黄源としSY1株を培養し、分解生成物を抽出・精製後、各種機器分析を行い、2-ヒドロキシビフェニル、ジベンゾチオフェンスルホン酸、ジベンゾチオフェン-5-オキサイドを同定した。また、DBTに生育した菌体は、トルエンスルホン酸をクレゾールと亜硫酸イオンに分解した。 3. DBT分解における硫酸イオンの影響について石炭を用いてSY1株の脱硫能を調べてみると、実際には石炭はほとんど脱硫されていないこおが明かとなった。原因を検討した結果、硫酸イオンが存在するとDBTがほとんど分解されなくなるという現象が観察っされた。培地に塩化バリウムを加え、硫酸イオンをとラップすると、DBTに対するST1株の脱硫能を向上した。
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