研究概要 |
氷核活性細菌Pseudomonas viridiflava DNA中の氷核活性を含む約13.2kb-Eco RIフラグメントの自己環化DNA(pNVR-1)を作成し、主として氷核活性部位の塩基配列の決定及びpNVR-1の複製領域を利用したベクターの開発を試みた。以下に、研究実績の概要を述べる。 1)pNVR-1上の氷核活性遺伝子(inaV)部位のサブクローニングをpUC系プラスミドベクターpHSG298を用いて行い、inaVの塩基配列の約90%を決定した。決定された塩基配列のデータを基にinaVの氷核活性タンパク質のアミノ酸配列を推定したところ、inaVの氷核活性タンパクは、N末端領域・R繰り返し領域・C末端領域の三つの領域に分類された。さらに、既知の氷核活性タンパク質のアミノ酸配列と比較したところ、これら三つの領域は、非常に高い相同性を示すことがわかった。また、inaVが染色体由来かプラスミド由来なのかを明らかにするためP.viridiflava KUIN-2のゲノム分析を行ったところ、inaVはプラスミド由来であることがわかった。氷核活性遺伝子がプラスミド上にコードされているという報告がないことから、非常に興味深い結果である。 2)pNVR-1から構築したミニプラスミドpNVR-1012(約2.7kb)は、E.coli及びP.aeruginosa中で発現可能であり,かつ,両菌株中で多コピー数存在することがわかった。また,pNVR-1012のE.coli中での複製には,E.coliのPolAタンパク質が関与することがわかった。pNVR-1012のベクターへの応用を検討するため,pNVR1012を用いてNAHプラスミド上にコードされるsalicylate hydroxylase(nahG)geneのクローニングを試みた。nahG geneを持つ組換えプラスミドpNVR-nahGは,E.coli及びP.aeruginosa中で良好なnohG活性を示したことから,pNVR-1012はE.coli及びPseudomonas属用のシャトルベクターとして利用できることがわかった。
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