研究概要 |
サツマイモとその近縁野生種におけるトランスジェニック植物体の効率的作出法の開発を目的とし、本年度は、リーフディスクおよび苗条原基からの植物体再分化系を開発し、それらの系を用いたAgrobacterium感染処理による遺伝子導入法について検討した。 サツマイモ5品種および近縁野生2倍体種3系統を材料に用いた。これらの植物体から生長点を摘出し、NAAおよびBAPを含むMS液体培地中で回転培養したところ、野生種では苗条原基様の多芽体が誘導され、さらにこれらをホルモンフリーの再分化培地上に移したところ、植物体の再分化が認められた。一方、リーフディスクをNAAを含むMS固形培地に置床したところ、サツマイモの2品種台農10号およびJewelにおいて、植物体の再分化が認められた。またこれらの品種では、リーフディスクから発生した不定根をホルモンフリーのMS培地に移した場合にも、植物体が再分化した。そこで上記の品種・系統を用いて、生長点およびリーフディスクとA.tumefaciensとの共存培養を行い、形質転換植物の作出を試みた。なお、用いたA.tumefaciens株EHA101系統は、GUS遺伝子とカナマイシンおよびハイグロマイシン耐性遺伝子をTiプラスミドに組み込んだものである。生長点を共存培養に用いた場合には、選択培地上での多芽体の形成は全くみられなかった。一方、1,2,5,10および30分間の共存培養後、リーフディスクを抗生物質を含まない再分化培地で5日間、500mg/mlカルベニシリンを含む再分化培地で6日間培養し、形成されたカルスと不定根についてGUS活性を検定した結果、すべての処理区で形質転換細胞が認められた。これらの組織を70mg/mlカナマイシン+25mg/mlハイグロマイシン+500mg/mlカルベニシリンを含む選択培地上に移植したところ、不定根の増殖が認められた。現在、これらの不定根を再分化培地に移植し、トランスジェニック植物体の再分化を図っている。
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