従来、水稲の多収性に関与する要因としては多くの形質が指摘されており、多収性品種の備えるべき生理生態形態的特徴としては、多くの組み合せの存在することが考えられる。そこで本研究では、91および92年度の2ケ年にわたり、東北地方の主要な品種及び多収を目指した品種改良により育成されつつある系統の中からいくつか選び、それら各品種・系統の収量性および生育特性を調査した。さらに、出穂開花期直前より種々の育成段階における個葉光合成速度とそれらの全窒素含量およびクロロフィル含量を定量し、生育のすすみにともなう個葉光合成速度の推移およびその相違をもたらす要因について比較検討した。 両年度共通の供試品種としては、あきたこまち、山形22号、奥羽316号、ひとめぼれ、奥羽331号、キヨニシキ、はなの舞、フジミノリ、アキヒカリおよび奥羽339号の10品種・系統をさらに、91年度はたかねみのりおよび92年度は奥羽342号を用い、圃場に慣行に従って栽培した。その結果、91年度7月中〜下旬の低温に伴う障害不稔の著しい品種を除き、両年度ともに各供試品種の収量には600kg/10α弱から750kg/10α程度までかなりの相違が認められた。さらに、いずれの品種においても出穂開花期以降生育のすすみにともない光合成速度、全窒素含量およびクロロフィル含量はともに低下し、とくに光合成速度の低下が顕著であった。しかし、無追肥区に比べて追肥量の増加にともないそれらの低下程度は小さかった。また、いずれの生育時期・窒素区においても、各品種の光合成速度にはかなりの品種の差異が見られた、そして、個葉光合成速度と全窒素含量およびクロロフィル含量との間には密接な相関関係が認められたが、登熟後期においては、同じ窒素およびクロロフィル含量であっても光合成速度にはかなりの相違のあることが認められた。今後、同一窒素レベルであっても光合成速度に相違の生じる要因を明らかにする必要がある。
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