1.休眠性の異なる栽培イネ品種(日本型品種:休眠性弱い越路早生、休眠性強いコシヒカリ、インド型品種:休眠性強いDharial)を用いて、登熟環境とくに生育時の日長条件が種子寿命に及ぼす影響について検討し、併せて種子形質との相関を求めた。(1).日長条件とイネの生育状況との関係を求めた結果、主稈葉数は短日処理により減少し、長日処理により増加し、とくに7葉期・9葉期に処理した場合この傾向が強かった。主稈長は両処理により増大したが、この割合は長日処理に比較し短日処理で一層大きかった。(2).日長条件とイネの登熟状況との関係を求めた結果、短日処理はいずれの時期も不稔を多発させ、死米の発生も12葉期・出葉期の処理で顕著に高めた。この結果、短日処理は完全米の割合を著しく低下させ、出穂期処理では40%ほどであった。米粒の大きさは短日・長日の両処理により増加するが、この割合は長日処理に比べ短日処理で大きく、また若令期処理ほど大きかった。(3).日長条件と発芽特性との関係を求めた結果、成熟時の発芽率は若令期処理で得た種子ほど低く、また長日処理で得た種子に比べて短日処理で得たものほど高かった。遺伝的に休眠性の強いDharialは成熟時に両処理区ともに発芽が認められなかった。貯蔵時の発芽率は長日処理を与えた種子に比較して短日処理を与えた種子で低かった。このことは休眠性の大きいものほど、発芽能力の喪失が遅いと解釈され、生育過程で獲得された生理的要因が種子寿命を支配していることが明からにされた。 2.窒素溶出速度の異なる3種の緩効性肥料を用いて水稲の登熟と品質に及ぼす影響について検討した。(1).収穫指数、登熟歩合及び粒重は窒素溶出速度の種類やその施肥量に影響されなかった。(2).玄米のタンパク質と食味値(Mg*K/N)は窒素溶出速度に影響され、溶出速度が速いものはタンパク質を低下させ、食味値を増大させた。この傾向は施肥量が増すとともに高まった。
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