UV-A及びUV-Bのうち、より波長の短いUV-B域の紫外線は生育に対する抑制作用が大きく、その強度が増すと共に抑制作用が大きくなることが認められた。この抑制作用は、作物の種類によりその程度が異なり、ことにイネ科作物のトウモロコシ、オオムギ、コムギ、水稲は、インゲン、ダイズに比べ抑制作用が少さいことが認められた。この原因としては、双子葉、単子葉植物の葉の組織構造や受光態勢の相違が考えられる。生育抑制に対する防御反応として、生育抑制を受けると、葉が小型化し厚くなるが、葉の厚さに対する表皮の厚さの比率を大きくする場合と、柵状組織が厚くなる場合とが観察され、この点に関しては細胞の微細構造も含めて今後さらに追究したい。また、作物の種類による変異も併せて検討する予定である。発芽に及ぼすUV-Bの影響として、吸水させた種子に対するUV-B照射を行ったところ、ナスについては発芽が促進され、作物の種類によっては発芽促進に利用可能であるものと推測された。自然光中のUVを透過するものとカットするビニールフィルムを用いた試験では、インゲン、ニンジンの生育は紫外線をカットすることにより助長されたが、光合成に関しては、UVが存在する方が高く、必ずしもUVが光合成の阻害要因ではないことが示唆された。一方、オゾン層の破壊によるUV-B放射強度の増加を想定して、強度を変化させてコムギの生育、生産に及ぼす影響を検討した結果、自然状態では生育後期の葉の枯れ上がりが大きいのにたいし、放射強度が大きくなるとむしろ生葉が保持されて収量が高められ、また、粒の蛋白質含有率も対照区の9.7%に対し15〜16%に高められ、収穫物の品質まで作用が及ぶことが認められた。UVの防御反応について、動物では亜鉛の 効果が報告されており、水稲について施与を試みたが、明確な結果は得られなかった。 UVと作物の生育・生産について、今後ともさらに作物栽培の立場から紫外線の影響を検討したい。
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