研究概要 |
青果物の低温障害の発生防除については,種々の立場から研究があるが,一定の成果は得られていない。本研究はC_<10ー18>の脂肪酸蔗糖エステル処理が,ある建の青果物の低温障害の発生を軽減できる可能性に着目し,果実,果菜および組織培養によるカルスを材料とし,蔗糖脂肪酸エステル処理による低温障害の防除効果およびその機作について調べ,次の知見を得た。 1.実バエ殺虫卵のシミュレ-ション実験とし,ポンカンの低温殺虫処理(1℃ー16日)および出庫後20℃での低温障害の発生を調べた。糖エステル処理によって,低温障害の発生を有意に抑制できた。なかでもミリスチン酸蔗糖エステル(Mー1695)は有効で,官能検査の結果,外観評価,味覚評価とも最も優れた。 2.サヤインゲンの低温貯蔵(1℃)中の障害発生の抑制に,C_<14ー18>蔗糖肪肪酸エステル処理が有効であった。ナス果実‘千両'でもMー1695処理が効果的であったが,ナスの品種,処理方法によっては結果が一定しなかった。 3.ナス果実から誘導したカルスの低温処理(1℃ー5日)による呼吸の低下をラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸蔗糖エステルが抑制した。組織切片を用いた場合,この呼吸低下に対する糖エステル処理の効果はそれほど明らかではなかった。 4.ナスのカルスを低温処理(1℃ー4日間)すると,カルスから分離したミトコンドリアの呼吸調節機能が失われ,25℃に戻してもこの機能は回復しないが,あらかじめラウリン酸蔗糖エステルで処理したカルスでは,25℃昇温後ミトコンドリアの呼吸調節機能が回復した。 以上のようにC_<10ー18>の蔗糖脂肪酸エステル処理が,青果物の低温障害の発生軽減に有効であること,その機作に細胞,細胞小器官が関連する可能性があることを明らかにした。
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