本年度は、異なる根温で生育した根のmRNAによるin vitro翻訳生成物について調査する予定であったが、予備実験が予想外に手間取り、最近になってやっと再現性のあるデータを得ることができるようになった。現在、14℃と23℃で2、4、6日間生育させた根と14℃・6日間ののち23℃に移して2日間生育させた根から精製したmRNAによるin vitro翻訳反応の生成物について調査を始めている。 そこで、この報告書では、上記の実験と平行して行った『低根温遭遇によるクロダネカボチャの根のRNA濃度増大の機作』について調べた研究の結果を報告する。 クロダネカボチャは低根温遭遇により根のRNA濃度が顕著に高まるが、この研究では、根のリボヌクレアーゼ及びRNAポリメラーゼ活性(各酵素の最適温度と根の生育温度で測定)の低根温遭遇後の変化を調べた。最適温度で測定したリボヌクレアーゼ活性は、クロダネカボチャでは低根温遭遇根のほうが低かったが、キュウリでは低根温遭遇根のほうが高かった。生育温度で測定した場合には、両作物とも低根温遭遇根のほうが低く、低根温遭遇後の変化はみられなかった。一方、RNAポリメラーゼについては、最適温度で測定した活性は、クロダネカボチャでは低根温遭遇根のほうが明らかに低かったのに対して、キュウリではリボヌクレアーゼと同じく低根温遭遇根のほうが幾分高かった。しかし生育温度で測定した活性は両作物とも低根温遭遇根のほうが低く、またキュウリでは低根温遭遇後の変化はみられなかったのに対して、クロダネカボチャでは低根温遭遇の伴って次第に増大した。両酵素の活性の比率とRNA濃度の間には密接な正の相関が認められた。以上の結果低根温遭遇に伴うクロダネカボチャの根のRNA濃度の増大にはRNAポリメラーゼ活性の増大が関与していることが明らかになった。
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