研究概要 |
昨年度に引き続いて,カット野菜の品質保持,特にその切断面の酵素的褐変の防止を目的として,ポリフェノール酸化酵素(PPO)インヒビターの精製とその利用に関する基礎的実験を行った。すなわち,さきにダイコンの抽出液が高いPPOインヒビター活性を有することを認めたので本年度はこのインヒビターの精製を試み,以下の成果を得た。アスコルビン酸を酵素により酸化させた後のダイコン抽出液について,残存するタンパク質を加熱変性により,また色素等を酢酸エチルにより除去した。この試料液についてセファデックスG-25によるゲル瀘過を行ったところ,低分子画分にPPOインヒビターの存在が認められた。このインヒビターをシリカゲルC_<18>による逆相クロマト,ついで,ブタノール酢酸系の展開溶媒で薄層クロマト(シルカゲルG使用)を行うことにより,2個のインヒビター画分(A及びB)を得ることができた。しかし,HPLCの結果それぞれの画分にはまだ2、3の成分の存在が認められた。そこで今回は阻害活性に高かったA画分を集め、さらにベンゼン:メタノールを溶媒とする薄層クロマトを行った結果,2個の高度に部分精製されたインヒビター画分(A1,A2)が得られた。このうち,阻害活性の高かったA2画分についてHPLCを行い,ほぼ均一と思われるインヒビター画分を分取した。この画分は270nm付近に吸収のピークを示し,塩化鉄反応には陽性であることから,インヒビターの本体はかなり低分子の一種のポリフェノール化合物と考えられる。さらに,このインヒビターはレタスPPOを拮抗的に阻害し,レタス切断面の褐変を強く阻害することがわかった。
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