1.ミナミマダラスズの24母系の翅型光周反応を解析し、臨界日長の変異は形質誘導能の量的変異の反映で、光周時計の変異の表現ではない、と結論した。選択の条件を変えて、12〜13時間の臨界日長を11〜12時間に短縮あるいは13〜14時間に延長する選択を試みると、短縮効果はある程度えられたが、10世代の間には臨界日長の増加は実現せず、翅型誘導能のみが変化した。 2.選抜により確立した長翅率の異なる系統を用いて、光周期以外の信号刺激(温度や密度)にたいする反応を調べた結果、選抜の標的になっていたのは、翅型表現に関わる生理的性質であり、光周反応の臨界日長を決める遺伝子ではない事がわかり、上記の推定が裏付けられた。3.ヨトウガの蛹休眠を支配する光周反応において、共鳴効果の発現にたいするする温度の影響、二相安定反応に対する同調効果、自由進行効果などを検討した。その結果、実験条件によって、振子型あるいは砂時計型の反応が現れた。光周期を測時する機構はおそらく砂時計型であり、休眠決定の機構に概日系がかかわっている。両者の関係のあり方が環境条件によって変化し、それに応じて光周反応の表現が変わるのではないか、という前年度の推定が裏付けられた。 4.コバネイナゴの発生経過のばらつきの原因を探るため、野外における休眠の実態を調べた。成虫の産卵期が長期にわたるため、冬になるまでに休眠期に達しない卵がかなり発見されたが、従来の知見とは異なりそれらの卵の胚子が休眠以前の初期発育の段階であっても、越冬できる事がわかった。この場合には越冬後に休暇するので、孵化期が遅れる。一部の卵は越冬前に休眠を完了したが、生存できた。さらに越冬後の湛水によって孵化が抑制され、秋に若令幼虫が出現する要因となることがわかった。
|