研究概要 |
チトクロムP450は殺虫剤の解毒分解に関与している薬物代謝酵素の1つであり、その活性増大は多くの害虫において殺虫剤抵抗性の主要メカニズムとなっている。ピペロニルブトキシドに代表されるメチレンジオキシフェニル化合物はチトクロムP450の特異的阻害剤であり、殺虫共力効果を示すが、選択性欠除のために哺乳動物に対する毒性増強の副作用を伴う。本研究は昆虫と哺乳動物のチトクロムP450の阻害に関して、選択性を示す阻害剤を採索し、哺乳動物への毒性を増強せずに害虫の殺虫剤抵抗性を克服する方法を開発することを目的として行ったものである。その結果、in vitroスクリ-ニングによって9種のメチレンジオキシフェニル化合物が選抜され、さらにin vitroスクリ-ニングによってこれらの中から3,4ーmethylenedioxybeuzeneー1ー(I′ーmethoxyーethoxymethyl ether)(化合物NO.1)が選抜された。本化合物は数種殺虫剤と組合わせて処理することにより、コナガ、イエバエ、モモアカアブラムシ等の害虫に対して共力効果を示し、抵抗性を解除するが、ラットに対する経口毒性は増強しないことが確認された。メチレンジオキシフェニル化合物は一般に活性中間体carbeneを経てチトクロムP450のヘム鉄と結合し、TypeIIIと呼ばれる特徴的なスペクトルを示すことが知られる。化合物NO.1のスペクトル解析を行った結果、イエバエとラット肝のチトクロムP450に対する選択性は、各々のチトクロムP450に対する親和性の違いに基づくことが示唆された。さらに、ス-パ-コンピュ-タ-を用いて構造ー活性相関の解析を行い、選択性を保持しつより共力効果の高い化合物の構造を予想した。
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