研究概要 |
蛾類雌成虫の分泌する性フェロモンは、腹部末端に存在するフェロモン腺において対応する脂肪酸より生合成されること、またその生合成は、食道下神経節(SG)より分泌される神経ペプチドホルモン(PBAN)によって活性化されることなどが明かとなってきた。このことをふまえ以下の研究を行った。 (1)交尾が誘起する性フェロモン産生抑制作用の解析 交尾後に雌蛾の性フェロモン含量は減少することが知られているが、その制御機構は未だ解明されていない。交尾時間とフェロモン量との関係を検討したところ、交尾後ボンビコールを再び産生させないためには、6時間以上継続した交尾が必要であることが判明した。そこで、6時間交尾させた雌蛾に、合成PBAN(20ng)を胸部体節間膜より注射したところ、ボンビコールの生合成が再開された。この結果は、交尾による何らかの刺激がSGからのPBANの分泌を妨げていることを示唆しており、交尾後の雌の体液中のホルモン濃度に興味がもたれた。 (2)PBANのモノクローナル抗体の作成 昨年度、体液中のPBANの濃度を測定すべく、C末端側11残基のペプチドを材料に抗体の作成を行ったが、最近カイコガ頭部より休眠ホルモンが同定され、そのC末端側5残基は良く似ていることが明きらかとなった。そこで、N末端15残基のペプチドを材料にしてモノクローナル抗体の作成を再度行った。現在、得られたハイブリドーマをクローニング中である。 (3)△11ー不飽和化酵素の阻害物質の合成とその阻害活性の測定 ボンビコールは、パルミチン酸から△11ー不飽和化酵素の働きで形成される(Z__-)-11-hexadecenoic acidを経由して生合成される。今回、11位にプロペン環を持つ脂肪酸11,12-methylenehexadec-11-enoic acidを化学合成し、その生合成に及ぼす影響を検討することができた。
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