本年度に計画していた研究項目は、特異な保有性フェロモン構成成分比や量をもつ系統の分離とその遺伝的要因の関与の程度、環境要因の保有性フェロモンに対する影響、および放出性フェロモンの分析、等であった。 性フェロモンの構成成分比に関しては、前年度の結果とあわせて、今回調査したジャガイモガにおいては、予想を超える環境要因の影響の強さから、遺伝的要因のみを抽出することが困難であった。環境要因の内、特に飼育温度の影響は強かった。他に報告例をみないこの現象については、国際化学生態学会の機関誌に論文が掲載された。一方、保有量については遺伝的制御が明瞭であり、現在交配実験などによる検討をすすめている。本年度の研究で特に注目すべき点は、前出の飼育温度の影響の感応時期についてである。成虫の羽化直後から、時間を追って詳細に保有性フェロモンを調べた結果、羽化直後はどの温度条件においても一方の成分にのみかたよった性フェロモンをもっているが、その後の両成分の生合成の量と速度が温度条件の影響を受けることによって、結果として保有性フェロモンの構成成分比に差が出て来ることがわかった。この結果については、さらに一部の結果を加えた上で、関係国際雑誌へ論文を投稿する予定である。 一方、放出性フェロモンの分析については、吸着媒体をガラスビーズに変えることによって、かなりの効率で性フェロモンを捕集できることが明かとなった。現在、性フェロモン保有量の多い系統を用いて、より効率のよい捕集方法を検討している。
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