研究概要 |
本研究担当者らは偏性寄生性微胞子虫であるNosema bombycis(Microsporidia:Nosema科)が培養細胞内で、これまで知られていなかった二つの型の胞子を形成することを発見していた。そこで今回、この胞子の二型がN.bombycisの宿主であるカイコガの細胞内でも形成されるか否かについて調べた。 その結果、N.bombycisは培養細胞系と同様、家蚕幼虫体内でも2種類の胞子を形成することが確認された。in vitroばかりでなく、in vivoでの胞子二型性が確かめられたので、胞子の二型性はこの微胞子虫の本来の特性と結論される。その胞子の形態、接種からの出現時期ならびに形成後の自発的な孵化は、培養細胞内におけるそれらとほとんど同様であった。従来、本微胞子虫に感染したカイコガはいわゆる“未熱胞子"が最初に検出されることが知られていたが、今回の研究から、これらの“未熟胞子"は初期に形成され、自発的に速やかに孵化するタイプの胞子(短極糸型胞子)に由来すると判断した。 この研究のうち、感染後の胞子出現時期、胞子の孵化を示す極糸(発芽管)の確認において用いられた位相差顕微鏡は、本研究に対して、与えられた補助金によるものである。 本研究の一部は、日本蚕糸学雑誌(60巻4号,1991)に論文として発表した。
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