研究概要 |
蚕の微胞子虫の病原Nosema bombycisは培養細胞を宿主細胞とするとき,二種の胞子1)早期に形成され,極糸の巻き数が少なく,自発的に孵化し,近傍の培養細胞に芽体を送り込む胞子と,2)後期に出現し,極糸の巻き数が多く,孵化させるのに活性化を必要とする胞子を形成する(Iwano & Ishihara,1989)。 本研究の目標は,1)この二種の胞子が,宿主昆虫の細胞に於いても形成されることを明らかにする。2)N.bombycis以外のNosema属微胞子虫もこの二種の胞子を形成することを調べる。3)Nosema属以外の微胞子虫で,Nosema属様の胞子形成を行うVairimorpha属についても調査を進める,の3つであった。 その結果,1)調査した二種の胞子は,蚕幼虫の中腸細胞に於いても見いだされた(平成3年度)。2)スジキリヨトウより分離され胞子の形状と,抗単クローン抗体感作ラテックスに対する反応がN.bombycisと異なり,蚕幼虫に経口感染しないNosema sp.に於いてこの二種の胞子を確認した。その結果の詳細は,Appl.Entomol.and Zool.29(2)(1994)に登載の予定である(平成4年度)。3)N.furnacalis-宿主昆虫はアワヨトウ-が培養細胞内で発育する時,やはり前述の二種の胞子を形成することを確かめた(投稿準備中)。このように本受領者が発見した胞子二型は,この補助金により行った研究の結果,この胞子二型はNosema属の微胞子虫に広くみられることが明らかになった。4)Vairimorpha様の微胞子虫の一分離株,M-12は,Vairimorpha sp.であることを明らかにし,この微胞子虫の培養細胞への接種に成功した(投稿準備中)。5)早期に出現する型は,米国の研究者によっても追認された-Solter,L.F.et al.(1993)XXIVth Annual Meeting,the Society of Invertebrate Pathology,Ashville,NC.。
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